チベットの旅 − 青空とマニ車 −

Hidehiko Mizuno Photo Exposition

水野秀彦 スライド上映会 名古屋


5/26      2000  終 了
5月26日[金]

19:00PM - 21:00PM

環境共生ビル グリーンフェロー5F ラウベ 
定員20名 要予約 1,000円(軽食飲み物あり)

場   所  名古屋市北区清水 5-10-8
        地下鉄黒川駅より徒歩5分

問合せ・申込み 景観設計室タブララサ 052-919-3020                      FAX052-919-3021


 


 チベットの空は、まるで偏光フィルターでもかけられたかのように深く濃い青色をしていた。それだけ空に近いということと、空気中の塵や水蒸気が全くないからこんな色になるのだと、自分の頭の中では納得しながら、その不純物のない空気を通して照りつける強烈な太陽の光を、全身に感じながら暖をとった。気温は氷点下なのだろう。日陰では日中でも水たまりが凍りついていた。

 マニ車がいたるところで廻っている。一回廻すと読経を一回したことになると言われるマニ車。チベットの人々は手にいつもくるくると廻している。そしてチベットの街が廻っている。寺院を中心に巡礼の人々がみな同じ方向に廻っている。日々変わらぬこうした光景が繰り返され、長い年月の中にチベット人の魂が輪廻する。


 こんなにも荒涼とした山の中に、そしてこんなにも高いところに、はたしてチベットの都ラサは忽然と存在していた。チベット民族によって仏教を中心に築かれた隔絶された文明が、高い山々を隔てて存在する。しかし今、その文明も大きく変貌しようとしている。 
 1999年暮れより年明けの約10日間、ラサを中心に滞在した。今なお受け継がれ守られている崇高な精神文化と、極限の環境とも言えるこの高地にさえ巨大化し増殖しつつある現代文化とのギャップをまざまざと感じた。
 かたくなに仏教を信じ、その教えに基づいて生活する民族の姿。貧しくとも崇高な精神に裏打ちされ純粋な民族の姿は、まだいたるところで存在し、今急激に押し寄せている近代化の波によってもそう簡単には塗り替えることは出来ないのかもしれない。しかし、聖都ラサの様相は確実に近代化によって変遷を始めていた。 人の生命が存在すること自体限界に近いこの厳しい大自然の中にあって、チベット民族の昔から変わらぬ生活文化と、執拗に押し寄せる近代化の波が、なおのこと人間というものの力強さを痛感させる。


 水 野 秀 彦



作品紹介