1999年夏

乗鞍岳 のりくらだけ

猪 飼 俊 彦(昭和40年卒)

1999年夏:乗鞍岳

2HC(2時間チャレンジ)で乗鞍岳速攻登山に挑戦している内海に「野麦の森尾根」 登山口の情報を知らせてもらい、昨年の8月に友人2名と私で野麦の森尾根登山道経由で頂 上を目指す事になった。                              
親切な集落の地区長さんの家にマイカーを駐めさせてもらい、地元の農家の庭先や畑を通っ て登山道に入る、という作業を戸惑うことなくできたのは彼の事前情報のおかげである。
彼の詳細な情報はここまで。                           
あとは未知の世界、1時間も登ると熊笹の生い茂る細道になってきて熊との遭遇が現実味を 帯びてくるような不気味な感じである。                       
お遍路さんのように「チリンチリン・・」と鈴を鳴らしながら進む。         
鈴の効果かどうかは判らないが、出会った動物は運良くリス1匹だけだった。 3時間も進むとやっと視界が開けた沢筋に出る。                   
 どうやら熊棲息地帯?は抜けたようだ。
出発する時はかなりの雨だったがいつの間にか回復してきた。 実は、出発間際に一騒動あってスタートが遅れてしまった出来事があった。 仲間の一人が「雨具がない!」と大慌て。                      
夏とは云え3000mを目指すには致命的な忘れ物だ。               
ここらで雨具を売っているような店はない。 地区長さんにお願いして農作業用の雨具を拝借して事無きを得た、というお粗末な事件。 熊の恐怖からも、いわく付きの雨具からも開放されて、おまけに開放的な景色が現れて やっと山歩きを楽しむ余裕が出てきて、記念写真を撮ったりして乗鞍の懐に抱かれている幸 せを実感。                                    
畳平側から登っては体験できない静寂な「乗鞍岳」がここにはあった。
私が「乗鞍岳へ行こう」と提案した時「ノリクラ??、ノリクラって、車で行く乗鞍?」 と乗り気ではなかったのに、平均年齢50才を過ぎた中年団塊の世代のおじさん登山隊の 相棒たちが無邪気に喜んでいる。                          
このルートを選んだ甲斐があったというものだ。 この日は、地図上では等高線が広くてテントが張れそうな場所、標高2700m辺りで1泊 の予定。                                     
そんな都合の良い場所があるのか心配だったが歩き始めてから6時間経過した頃、ちょうど 良い平地を見つけテント設営。                       
周りは高山植物が咲き乱れ歩くのに気を使わなければ踏んでしまいそう。  
ここからは頂上が見える。ということは頂上からテントが見える訳だ。
乗鞍岳ってテント設営OKなのだろうか? 今更、駄目と言われても困るけどなぁ。
この問題は曖昧にしておこう・・・。


快適な一夜を過ごし、山岳パトロールが目を覚ます前に急いでテントを撤収して、何喰わぬ顔でコマクサの咲き乱れる「高天ヶ原」を散策してから山頂を目指す。40分程で頂上のお社へ到着。大勢の登山客で一杯だ。1時間ほど付近をブラブラして下山にとりかかる。下りは「中洞権現の尾根」ルート。
登り以上に熊笹に悩まされ、道なき道を何度も迷いながら酷い目に遭って林道に出る。予定を2時間以上オーバーしてしまった。
私には、もう1つ重要な仕事が残っている。地区長さんの家まで「自転車」で走って行き2人の待つここまで車で迎えに戻る、という仕事が。あらかじめ、下山口にデポしておいた自転車に乗って8Kmの平坦ではない道を走らなければならない。毎年、琵琶湖1周(180Km)の自転車レースに出場しているのでどうって事ない距離であるのだが・・・・ところがとんでもないミスをしてしまった。
自転車を組み立てる時、何かの不備でギアチェンジがうまく作動しなくなってしまったのだ。初めの1Kmはずーっと下りだったので気が付かず、上り道にさしかかった時に異常に気付いたが、最初のうちは馬力で頑張っていたのだが、長続きせずついにダウン。上り坂は降りて自転車を引きずるようにして歩き、平坦な道と下りだけペダルを踏んで、必死の思いでマイカーまで辿りついた。この辛さ、自転車族のTOYAMA君なら理解してくれるだろう。
「マイカー登山の山」として親しまれている乗鞍岳の本来の姿を垣間見た気がする今回の山行であった。

1999・7・8

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