サン マル マル マル 3000運動
猪 飼 俊 彦(昭和40年卒)
山頂直下の不思議な造形の碑→
御嶽山は我が家から見ることのできる唯一の標高3000m以上の出であった。「あった」と過去形を使わなければならないのは、次々に建つ高層ビルによって視界を遮られてしまったからだ。
居間から双眼鏡でその姿を眺めながら、山を想う、といったささやかな楽しみは奪われてしまった。
肉眼でも見えるくらいだから充分日帰り可能な距離である。
『明日は晴れ』という天気予報を信頼して「早起きして行こう」と思い立ち、急いで準備をして早々とベッドにもぐり込む。
翌朝3時30分、車に乗り込み、19号線をひた走り、3時間後に「田の原」に到着。
夏山の最盛期には広大な駐車場に車があふれんばかりに並び、登山客、白装束の御嶽教信者、観光客らが入り乱れてごった返すのだが、シーズン当初の平日、数台の車が止まっているだけで閑散としている。
ここはすでに標高は2300m。
安定のよい台形をした姿が快晴の紺碧の空の色と調和して悠然とした雰囲気で眼の前に追っている。
「頂上まで2時間」と目標を決める。単独で登る時は“時計だけがライバル”で、いつも時間と闘いながら先を急いでしまう。若さ日の「ガイドブック記載のコースタイムの半分の時間で登ろう」という悪しき習慣が30数年経った今も抜けきらず、余裕の無い慌ただしい登り方しかできないでいる。
御嶽山は信仰の山でもある。 登山道に沿って伺や地蔵が目に付く。信仰心なき筆者はそれらに手を合わせて拝むことなく一瞥を加えるだけで通過す。
Ωオウムの法則に逆らって布施をしなくても、健全な宗派だからバチは当たるまい。お賽銭も勘弁してもらおう。
途中、1回だけの休懇で目標の2時間を5分ほどオーバーして『大滝L山頂』に立つ。
心地好い風が疲れた体を癒してくれる。
汗が引いたら怠に寒くなってきた。山頂の小屋の前の温度計は8度を指す。寒いわけだ。
ザックの中から防寒具兼用の雨具を着込む。昨、慌てて詰め込んだザックには雨具の他にカメラ、Tシャツ1枚、コンビニで買つたおにぎり1個、お−
いお茶、板チョコ1枚、ガイドブックと地図が入っているだけ。一度参加させてもらいたいと思っている『デンタル遊歩会』の低山ハイクでも、もっときちんとした装備で歩いている筈だ。
これからはもう少しまともな装備持参で登るように心樹けようと思うのだが、また適当な物を詰め込むだけのような気がする。
トラブルに見舞われたら酷い目に遭いそうだ。
反省、反省!
とにかく薄い雨具を1枚身に着けるだけで寒さは感じなくなった。
最高点の『剣が峰』の頂上はここから一旦下って北側の斜面を登りさった所にある。大滝小屋から往後30分。
賽銭代わりにと、小屋でポカリスェットを街の4倍の値段を出して買う。一気に放み干したらまた寒くなってしまった。冷えた体を温め直すためにはちようど良い距離である。
さあ、3067mの山頂まであと
一息!
1999・7・8
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