岩登りとフリークライミング

昭和56年卒 水 野 秀 彦

 今年はもう私も37歳になってしまった。高校山岳部から山を始めて、大学までは山が最優先の趣味であった。このごろは山よりも旅行である。旅行といってもいわゆるリゾートとか観光地は興味がない。もっぱら海外の秘境や、発展途上国にあこがれる。そんなわけで山に行く回数は年に1回あるかないか。ここのところ「追いコン」もさぼり気味である。高校の頃はとにかく岩登が好きだった。そしてちょっとした壁を見るとどうやったら登れるかいつも考えてしまう癖がついていた。(これは山の岩壁に限ったことではなく、である。)

前尾根にて

手前より

猪飼OB・宮川OB・水野

 サラリーマン生活も長くなると、とかく運動不足になる。体重は増え、たまに歩いて通う会社の通勤にでさえ、夏などは汗だくになってしまう。名古屋の夏はそれだけ暑いのだと自分をなぐさめるが、毎日ランニングをやっていた高校の頃は、夏の盛りでもほとんど汗をかかなかった記憶がある。やっている営業の仕事は精神的には重労働?なのだが、肉体的には車での移動がほとんどで体力の消費はゼロに近い。気持ちだけ若いつもりでいたのだがいつの間にか体の衰えを感じるようになってきた。そんなことから身近に岩登りのできるところはないかと思っていたところ、前津のフリークライミングの練習場の情報が入ってきた。

 この練習場は、日本山岳会東海支部の事務所があるビルの横にかなり大がかりに作ってある。今までこのビルの横を何度か通っているはずなのに全く気がつかなかった。会社の仕事を終えてから偵察がてら行ってみるが、道具もみな貸してもらえるということで、さっそく登ってみた。経験があると話をしたら、いきなりトップで登ってみてくださいとザイルを渡される。まずゼルプストにザイルを縛る。大学山岳部でも岩登りもちょくちょく行っていた私は、何の迷いもなくブーリン結び(もやい結び)でザイルの末端を縛り付けたのだが、「これは今使わない結び方です」の一言。ここでは八の字結びを使うらしい。さて確保をお願いして壁に取り付く。支点は人工壁のボードの目地ごとにテープとカラビナがセットしてあるのでそこにザイルを通していけばいいのだが、いきなり垂壁から始まりちょっと登るとすぐにハングしてくる。ホールドはしっかりしているのだけれどちょっとへばりついているともう腕力がなくなってきてしまった。とてもトップで登るのは無理と思って降ろしてもらう。今では高校の頃全盛だったトロールシットハーネスというゼルプストも、危険なので使ってはいけないらしい。古い道具を持っていったらこれは使わないで下さいと怒られた。会社の後輩に、先輩面してこれはザイルと呼びますなんて説明していたら、どうやらフリークライミングではロープというらしい。しばらくやっていない間に世の中は随分変わってしまったものだ。

 昨年夏から初冬にかけて、計5回前津の岩に通った。腕力で登ってはいけないと言われながらもやはり上部に行けば行くほど腕力を消耗し、結局ボードの一番上まではたどり着けなかった。今年も挑戦を続けるつもりである。会社の後輩連中が、今時珍しく岩登りなどに興味を持ちだして、昨年は3回ほど前尾根にも行った。高校の頃は何も考えず、怖さもなかったので、かなり大胆な?ところを大胆な方法?(キャラバンシューズや革の登山靴で登っていた)で登っていたが、今では怖さが先にたってしまう。落ちるかもと考えるととたんに体が動かなくなるのがよくわかる。正常になったということか。

 いずれにしても、山から遠ざかることのないように、無理してでも出かけるようにしたい。行ってみればたいていは大満足で帰ってくるのだから。 先輩・後輩のみなさん今年もまたよろしくお願いします。

御在所籐内壁 前尾根P4の登り

 

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